脳卒中再発予防のための身体活動について
脳卒中の再発率は、初回発症後1年で12.8%、5年で35.3%、10年で51.3%というデータがあり、発症後の経過が長くなるにつれて再発率は高まるといわれています。
脳卒中の要因としては、食事・運動・喫煙などの生活習慣や、高血圧症・糖尿病・脂質異常症・心房細動などの心疾患といった基礎疾患が挙げられます。再発を防止するためには、生活習慣の改善や内服の管理が重要です。ここでは、生活習慣のひとつである身体活動についてご紹介します。
身体活動のポイント:脳卒中再発を予防するために
身体活動とは、労働や家事といった「生活活動」やスポーツといった「運動」のことです。適度な身体活動は、健康効果やさまざまな疾患の発症リスクを低減することができるといわれています。身体活動を維持、促進することは、脳卒中の再発予防においてとても重要です。再発を予防するための身体活動について、3つのポイントに分けてご紹介します。
ポイント1 | 身体活動の強度を数値化する(メッツ)
身体活動の強度はメッツ(METsはMetabolic Equivalentsの略)という単位が使われます。座って静かにしている状態を1メッツとして、その何倍のエネルギーを消費するかで身体活動の強度を示します。
(例)身体活動 | メッツ |
---|---|
座ってテレビ鑑賞をする | 1.5メッツ |
立ち話や、立ったまま家事をする | 1.6〜2.9メッツ |
普通の速さで20分ほど歩く | 3メッツ |
早歩きを15分ほどする | 4メッツ |
かなり速いウォーキングを12分ほどする | 5メッツ |
年齢や身体状態により強度は異なりますが、日々の活動量を数値で把握することで効果的な身体活動につながります。
ポイント2 | 1日の身体活動量の目安
脳卒中の発症リスクについては、1日の座位行動が11時間を超えると上昇し、一方軽強度活動が2時間を超えると低下するとわかっています。また、かなり速いウォーキングなど1日あたり5メッツまでの身体活動は、脳梗塞の再発リスクが低下するといわれています。
ただし、過度な運動は血圧の急上昇など、逆に再発のリスクを高めてしまうことがあるため注意が必要です。血圧や心拍数、年齢など、身体にかかる負荷は人それぞれであるため、「ややきつい」くらいの適度な運動を心がけましょう。
ポイント3 | 1日の目標歩数
軽症脳梗塞患者が再発予防のために歩く場合、1日あたりの目標歩数は約6,000歩が目安といわれています。しかし、脳卒中患者の身体活動をまとめた報告では、多くの方は1日あたり4,000歩と目標歩数に達していないことが指摘されています。脳卒中の再発を予防するためにも、歩数計を使用して1日の歩数を把握するなど、意識的な身体活動を習慣づけましょう。
脳卒中の再発予防は医師による治療が大前提ですが、生活習慣も大きく関わります。日常生活で座っている時間が長いと感じた際は、これまで座って行っていたことを立ってやってみるなど、身体活動量の向上を意識しながら、再発予防に努めましょう。
参考文献
- Hata J.et al. Ten year recurrence after first ever stroke in a Japanese community: the Hisayama study.J Neurol Neurosurg Psychiatry.2005;76:368-372.
- 金居督之.脳卒中再発予防に対する身体活動促進に焦点を当てた理学療法の可能性.日本予防理学療法学会雑誌.第3巻2号,2024,53-60
- 金居督之.脳卒中患者における身体活動研究の動向-我が国での身体活動促進に向けた介入の現状と課題-.運動疫学研究.2019;21(2):91-103.
- 厚生労働省「生活活動のメッツ表」(外部サイトが開きます):https://e-kennet.mhlw.go.jp/wp/wp-content/themes/targis_mhlw/pdf/mets.pdf
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(外部サイトが開きます):https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf
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