中核症状における実行機能障害について~知っておきたい認知症のこと~
認知症の中核症状(詳しくはこちらの記事「中核症状と行動・心理症状(BPSD)〜知っておきたい認知症のこと〜」をご覧ください)における主症状の一つ、実行機能障害についてご紹介します。
実行機能障害とは
実行機能障害とは、物事を計画し、効率を考え、段取りよく行うことが困難になる状態です。たとえば、日常生活の中から料理の場面を想像してみてください。メニューはカレーにしましょう。
カレーを完成させるためには、「材料を買いそろえる→段取りよく野菜をカットする→煮込む→味付けする→皿に盛付ける」という動きが想像されます。実行機能障害の方は、この一連の動作がうまくつながらなくなるのです。
日常生活動作である、食事や排泄の動作も同様です。たとえば排泄なら、「トイレに行く→下着を脱ぐ→用を足す→陰部を清潔にする→下着を着る→トイレを出る」といった一連の動作を人は計画し、実行しているのです。実行機能が障害されると一連の動作が段取りよくできなくなる、動作が途中で止まってしまうといった状態が起きます。
食事が出されたけれど箸をつかむ動作につながらず、食べる動作を開始できない。料理が途中で終わってしまい、味のない煮物が完成してしまった。トイレに行ったけれど、下着を脱がずに用を足してしまった。このような症状がみられたら実行機能障害の可能性があります。
実行機能障害から引き起こされる行動心理症状
今までできていた家事や仕事がうまくできなくなったら、どのように感じるでしょうか? 落ち込んだり、焦る気持ちになりますよね。このようなストレスが認知症の行動心理症状を引き起こします。
たとえば、うつ状態や焦燥(落ち着きのない状態)などです。反対に、できないことを理解してもらえないことで、不安や焦りが生じ、相手に対する攻撃に転じることもあります。
実行機能障害がある方との接し方
実行機能障害がある認知症の方への接し方を3つのポイントに分けてご紹介します。
ポイント1│こまめに声をかける
実行機能障害では、一連の動作がつながらない状態が起ります。動作の開始ができない、動作が途中で止まってしまう……といった様子が見られたら、1つずつ次の動作を説明・指示します。手を添えて動作を誘導・支援するといった対応も有効です。こまめに声をかけることで、次の動作を促しましょう。
ポイント2│1度にたくさんのことを伝えない
たくさん情報があると混乱してしまいます。1度にたくさんのことを伝えず、1つずつ細かく伝えることがポイントです。「次は○○しましょうか」「○○が終わったら、次は○○しましょう」など細かく丁寧に伝えます。なかなか食事を食べ始めない場面であれば、「お箸を手渡し、手を添え、お茶碗をもつように誘導する」などもよいでしょう。
ポイント3│できない部分を見極め、さりげなく支援する
動作を見守ることで、動作が止まってしまったり、迷っていたり、困っている様子がないか観察します。そしてそのような状態が見られたら、「一緒にしましょうか?」と優しく声をかけ支援しましょう。最初からできないと決めつけず、できるところは見守り、できない部分をさりげなく支援することで、人として大切にされているという自尊感情が高まり、安心感につながります。
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