中核症状における見当識障害について~知っておきたい認知症のこと~
認知症の中核症状(詳しくはこちらの記事「中核症状と行動・心理症状(BPSD)〜知っておきたい認知症のこと〜」をご覧ください)における主症状の一つ、見当識障害についてご紹介します。
見当識障害とは
見当識障害とは、時間や場所、人物を認識・理解する能力が低下した状態のことです。こうした状態になると、日常生活を営む上でさまざまな支障が生じてきます。
時間を認識する能力が低下するとどうなるでしょうか。たとえば、夜中なのに「仕事に行く」と外に出かけようとするなど時間に適さない行動が見られたり、真夏にセーターを着るなど季節に合わない行動が見られたりもします。場所を認識する能力が低下すると、自分が今いる場所が分からなくなったり、家の中にいるのに、家にいるという認識を持てなかったりします。人物を認識する能力が低下すると、家族や友人の事を理解できない、あるいは間違ってしまうといった状態がみられます。
アルツハイマー型認知症の見当識障害では、症状の進行とともに「時間→場所→人物」の順に認識・理解する能力が低下していきます。進行の中期では道迷いが出現し、後期では家族のことを認識できなくなっていきます。
見当識障害から引き起こされる行動心理症状
想像してみてください。自分のいる場所が分からない、時間が分からない、周りにいる人が誰だか分からない、知っている人がいない……このような状態では誰でも不安になりますよね。不安になったり、混乱する状態が続くと、認知症の行動心理症状が現れます。症状としては、たとえば、徘徊(はいかい)、夜間不眠・昼夜逆転、攻撃・興奮などが挙げられます。
- 徘徊
夜中に急に家を出て行く、家にいるのに「もう家に帰りますね」と言い、出て行ってしまうといった行動
- 夜間不眠・昼夜逆転
夜間に眠ることができず活動したり、日中に眠ってしまうことが増える
- 攻撃・興奮
「あなた誰よ!」「勝手に人の家に上がって!」など、家族や近くにいる人に対する攻撃的な行動や言動が見られたり、興奮した様子になることがある
認知症の方が不安や混乱に陥らないように接することで、こうした認知症の行動心理症状を予防することができます。
見当識障害がある方との接し方
見当識障害がある認知症の方は、「時間」「場所」「人物」に関わる多様な不安や混乱を抱えています。そうした方に接する際のポイントは、何よりもその不安や混乱を理解することです。
ポイント1│会話の中でさりげなく場所や時間の情報を伝える
今いる場所や時間について、優しく伝えてあげてください。普段の会話の中で「今日は○月○日ですね。もう師走ですね。今は朝の7時ですよ。朝ご飯の支度をしましょうか」のように、時間や季節、場所の情報を伝えます。そうすることで現実見当識が高まり、自分の今いる場所や時間を認識することができます。
ポイント2│見当識の手がかりとなるものを設置する
今いる場所や季節・時間を確認できるものを、見える位置に設置するとよいでしょう。たとえば、カレンダーや時計を設置する、日時を確認できる新聞やニュースを視聴するといったことも効果的でしょう。見当識の手がかりとなるものを適切に設置することで、認識する助けになります。
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