急性期リハビリテーションの大切さ〜廃用症候群を予防するために〜
ご自身やご家族が手術または入院をしたあと、予想以上に早くリハビリテーション(以下、リハビリ)が始まって驚いた経験はありませんか?「手術をして間もないのに、なぜ体を動かさないといけないの?」「つらいのに運動する必要はあるのかな?」「痛みが強いのに動くなんて無理!痛みがなくなってからではだめ?」……急性期病院のリハビリに対して、このような思いを抱く方は多いかもしれません。発症後、あるいは手術後の早期にリハビリを開始する理由は、廃用症候群を予防するためです。この記事では、長期間の寝る姿勢が体に及ぼす影響と、運動の大切さについてお伝えします。
廃用症候群とは?
病気になり、動かない状態が長期にわたってつづくと、筋肉が動きにくくなる・筋肉量が減少するといった変化が起きます。さらに、必要以上に安静にして横になる姿勢がつづくことで、<体内を循環する血液量の減少><交感神経の働きが鈍くなる><心肺機能低下>などを招きます。このように、身体活動が低下することで生じるさまざまな症状のことを廃用症候群と言います。廃用症候群の症状には、主に下記のような種類があります。
- 筋萎縮
- 立ちくらみ(起立性低血圧)
- 食欲不振
- 便秘
- うつ
- 認知機能の低下 など
こんなに早い、身体機能の低下
では、動かないことによる体の変化は、いつから、どの程度起こるのでしょうか。
筋肉の萎縮や筋肉量の減少は、疾患の発症・手術または急性増悪(ぞうあく)から48時間以内に始まります。より具体的には、初期で1週間あたり約10〜15%、3〜5週間で約50%も低下すると言われています。心肺機能は1週間あたり1.3〜2.5%低下し、立ちくらみ(起立性低血圧)は2〜3日で出現することも。また、腸の活動も低下しますので、食欲不振や便秘が起こり、結果として体重が減少します。
気をつけなければならないのは、身体活動量の低下と内外からの刺激が減少することによる脳機能の低下です。これは、意欲低下・集中力低下・感情鈍麻(どんま)・うつ・知的機能の減衰につながり、やがて認知症(詳しくは「知っておきたい認知症のこと」を参照)へ進行する可能性もあります。特に高齢の方は改善が難しいため、注意が必要です。
意識して体を動かしましょう
廃用症候群を予防するためには、寝ているよりも座ること、座ることよりも立ったり歩いたりすること、また他者と話したり関わりを持つことが重要です。動くことは大切ですが、体力の限界まで運動する必要はなく、少し疲れる程度で大丈夫です。
急性期病院では医師による指示のもと、専門職が体の状態を確認しながらリハビリによるサポートを行っています。また、リハビリ以外の時間でも、医師の指示を守りながら自分でできることは自分ですること、起き上がっている時間や体を動かす時間を少しでも増やすことで、廃用症候群の予防につながります。