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胃がん、胃潰瘍の原因となるピロリ菌について

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に生息しているらせん形をした細菌です。昔から、胃には胃酸があるため細菌などは存在しないと思われてきましたが、1979年にピロリ菌が発見されて以来、さまざまな研究から胃炎や胃・十二指腸の潰瘍などの病気に深く関わっていることが明らかにされてきました。子どもの頃に感染し、一度感染すると多くの場合、除菌しない限り胃の中に棲みつづけます。

 

 

 

日本は欧米と比べて胃がんの発症率は約5倍

 

日本や韓国は欧米と比較して、胃がんの発症率が約5倍も高いと言われています。胃がんの原因の約99%を占めているのはピロリ菌です。欧米でもピロリ菌に感染している方はいますが、このような差が出るのはなぜでしょうか。

 

その理由は、日本人が感染しているピロリ菌と欧米のピロリ菌の型の違いです。日本の型の方が胃がんの発生を促進するものが多く、欧米の型は十二指腸潰瘍を促進しているものが多いと言われています。ここ数年、世界で広がっている新型コロナウイルス感染症も型が違うと症状や重症化率に変化があるように、ピロリ菌も型によって、がんになりやすいものとなりにくいものがあるのです。残念なことに、日本人に感染しているピロリ菌は、胃がんになりやすい型なのです。

 

 

 

胃がんを予防するには?

 

お話ししました通り、胃がんの原因の多くはピロリ菌です。ピロリ菌に感染すると慢性胃炎となり、長時間その状態が続くと胃の粘膜がうすくやせて「萎縮」の状態になり、胃がんの発生リスクとなります。

 

 

 

除菌を行うと、その後の萎縮性変化の進展は抑制できますが、除菌までの萎縮によって蓄積された胃がん発生のリスクは残ると言われています。つまり、早い段階で除菌をすればするほどリスクを減らすことができます。

 

除菌までの流れとしては、まず内視鏡で萎縮の有無を確認します。萎縮を認めた場合は、ピロリ菌の感染の有無を確認します。ピロリ菌の感染は便、尿、血液などで調べることができます。ピロリ菌がいた場合は、1週間薬を飲むだけで90%以上の確率で除菌できます。

 

除菌が成功した後は、1年に1回の内視鏡検査を勧めています。これは、除菌をしても、それ以前に感染していた期間の胃がんのリスクは残るためです。早期発見すれば内視鏡による治療のみで完治することも可能です。

 

 

( 2022.5発行│広報誌「甲友会ナウ」vol.57より)

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