”食べる”リハビリテーションとは
食べることは、生命を維持するために必要な営みというだけでなく、暮らしの中の大きな楽しみの1つでもあります。近年、脳卒中後の嚥下(えんげ)障害や誤嚥性肺炎後の治療など、“ 食べる”リハビリテーションが注目されています。「もう一度食べられるようになりたい」そんな患者さんのためのリハビリについてご紹介します。
※嚥下とは……食べ物を飲み込む動作
なぜ食べられなくなるの?
嚥下障害の原因として 、大きく次の3つに分けて考えます。
(1)器質性
器質性で多いのが、食道がんや咽頭喉頭がんなどの腫瘍です。
(2)運動障害性
脳卒中の脳血管障害や変性疾患のパーキンソン病などがあります。
(3)機能性
腔内炎症や高齢者が挙げられます。
どんな検査が必要?
嚥下障害を疑うと、まずはベッドサイドで視診や聴診・問診によるスクリーニング検査を行います。必要に応じ、以下のような検査が行われます。
- X線造影検査(ビデオ嚥下造影検査)
- 内視鏡検査(ビデオ内視鏡検査)
X線造影検査は消化管の検診などで使われるものと同じ硫酸バリウムという造影剤を使用し、透視下で嚥下動態の異常や誤嚥の有無・程度を把握します(その他、特殊な検査もあります)。
内視鏡検査は咽頭レベルで器質的・機能的異常の観察が可能です。
※スクリーニングとは……障害の有無を検出する簡便な検査
どんなリハビリをするの?
大きく間接訓練と直接訓練として、摂食嚥下訓練を開始します。
関節訓練は嚥下体操やアイスマッサージ、首や舌の運動を行うことで咽頭喉頭周囲筋を鍛える運動や、バルーン法といってバルーン付きカテーテルを嚥下して食道入口部の開大を促す訓練もあります。
直接訓練は食物を実際に食べる訓練です。摂食時のベッドや椅子の角度の検討にはじまり、ゼリーやトロミのついたものから一口大の副食といった食形態を、造影検査で確認しながら検討します。これでも改善がない場合は外科手術もあります。
このように食べる楽しみを再度得るために、医師、看護師、療法士、栄養士などが医療チームとなりリハビリテーションを行っています。