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高次脳機能障害について

「高次脳機能障害」は、マスコミでもしばしば取り上げられるようになりましたが、時折テレビのアナウンサーが「高次脳・機能障害」と変なところで切るのを聞いて違和感を覚えることがあります。それだけこの言葉はまだなじみがないのでしょう。そこで今回はできるだけ具体例を挙げて、分りやすくご説明したいと思います。

 

 

 

高次脳機能障害は「高次・脳機能・障害」

例えば、急須でお茶を入れる一連の動きを考えてみましょう。

まずお湯を沸かし、次に湯呑みなど必要な品物を用意し、そして適切な分量のお茶の葉を急須に入れる……など、いろいろ考えて動きますよね。

 

単に手が動くからといってうまくお茶を入れられるとは限らないことが分かります。高次脳機能障害ではこのような高い次元の活動がうまくできなくなります。身体は動くのに日常生活がうまくできないという「目に見えない障害」だけに、周囲に理解されにくい面があります。

 

 

 

主な症状と対応法

高次脳機能は人間の活動の多くに関わり、その障害も多様ですが、代表的なものを幾つか挙げます。

  • 失語症

こちらの記事でご紹介した失語症は、高次脳機能障害の代表格です。

 

  • 失行症

手は動き、道具が何であるかも分っているのに道具をうまく使えません。例えば、麻痺はないのにお箸がうまく使えない、ドアの開閉等も取っ手が自宅と異なるとできないなどの症状があります。リハビリでは、使い慣れた道具で正しい動きを段階的に繰り返し練習していきます。

 

  • 半側空間無視

目は見えているのに左右どちらかの空間に注意が向かず認識できない症状です。例えば、食事の時に片側のおかずに手を付けずに「ごちそうさま」と終わってしまうことがあります。対策としては、ご本人に片側を見落としやすいことを認識させ、動作や作業時に見落としやすい側を確認することを習慣づけていきます。

 

  • 記憶障害

よくあるのが発症後の新しい出来事が覚えられなくなることです。リハビリでは記憶そのものの練習も行いますが、記憶を補う方法としてメモやスケジュール帳の活用も促していきます。

 

  • 注意障害

注意が長続きせず他に注意がそれたり、一度に複数のことに注意を払えなくなります。注意が長続きしない場合はこまめに休憩を取る、他に注意がそれる場合は集中しやすいように環境調整をする、複数のことに注意を向けられない場合は1つずつ確実にこなせるように作業方法を工夫するなどの対策を取ります。

 

  • 遂行機能障害

要領や段取りが悪くなって物事を計画的に行えない症状です。例えば、私たちは食事の支度をするとき、おかずを作るよりも先にお米を研ぐなど、手順を考えて行動しますが、この障害では何から手を付けてよいか分らなくなります。対策としては、事前にすることを書き出して行う順番を決めてから実行に移すようにします。

 

  • 社会的行動障害

衝動的に行動したり感情の抑制が効かなくなります。ご本人は、その時はカーッとなってどうしようもないのですが、後で落ち着くと反省したりします。対策としては、感情が爆発する引き金となる話題や場面を周囲が探ってなるべく避けたり、感情が爆発しそうな時には場所を変えたり深呼吸を促すなど、周囲の協力と冷静な対応が求められます。

 

 

 

まずは症状の理解を

高次脳機能障害は回復するものの、後遺症として残る場合も少なくありません。まず、ご本人・ご家族は症状をよく理解することから始め、ご本人は適切な対処法を身に付け、ご家族が環境を整えることで、次第に生活に適応していきます。

 

(2017.05発行│広報誌「甲友会ナウ」No.37より)

 

 

 

 

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