脳神経外科って何をする科?
皆さんはどのような症状の場合に脳神経外科の受診を考えますか?「物忘れ」や「頭痛」「めまい」「手足に力が入らない」「頭の打撲」……などが思いつくかもしれません。これらの症状は、実際に問診票によく記入される受診理由です。脳神経外科は脳・脊髄・神経を専門とする診療科で、必要に応じて腫瘍の摘出や血管障害の治療、外傷の治療、神経系機能改善のための治療などを行っています。
「外科」という言葉から「手術」を連想されるかもしれませんが、全ての症例に対して手術が必要なわけではありません。実際に手術が必要な患者さんは、受診する患者さんのごく一部のみです。脳神経外科の外来診察時には、まず頭部CTやMRIといった画像検査を行います。画像検査で特に異常が認められなければ問題ありませんが、この段階で病気が見つかる場合もあります。病気の種類によっては緊急手術が必要です。ただ、多くは内服・点滴治療やリハビリテーションのみの内科的治療を行っています。
次に脳神経外科が対象とする主な病気「脳梗塞(のうこうそく)」「出血性脳卒中」「脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)」についてご紹介します。
脳神経外科が対象とする主な病気
脳梗塞
脳梗塞は脳卒中の一種で、血管が詰まることにより、血液が供給されず脳の細胞が傷害を受ける病気です。よく「脳梗塞は時間との戦い」と言われます。「脳梗塞かも?」と思ったら、ためらわず救急車を呼びましょう。脳神経外科では、発症から4.5時間以内であれば、tPAという製剤で血栓を溶かす治療を行うことができます。脳塞栓症(のうそくせんしょう)で太い血管が詰まり、強い麻痺(まひ)などの症状がある場合には、脳血管内手術で血栓を回収する治療を行う場合もあります。少しでも早く血管を再開通させることで、脳梗塞の拡大を抑え後遺症を最小限にする治療です。手術を必要としない大半の脳梗塞の患者さんには内服・点滴治療を行い、並行して早期からリハビリテーションを開始します。
脳出血
出血性脳卒中とは、頭蓋内で出血する病気です。その中でも脳の中に出血するものを脳出血と言います。血液の塊(血腫)により脳の神経連絡が途切れたり、強く圧迫を受けたりすることで、半身麻痺や意識障害などの症状が出現します。出血量が多い場合、生命に関わることがあるため緊急手術が必要な場合もありますが、脳梗塞と同様に多くは内科的治療とリハビリテーションのみを行います。中には血管奇形など、再出血のリスクが高いために手術が必要な方もおられます。
脳動脈瘤
脳動脈瘤は脳の動脈にできるこぶ状の膨らみで、破裂するとクモ膜下出血となり、死亡に至る場合や介護が必要な後遺症が残る可能性があります。そのため、動脈瘤がMRI・MRA検査で見つかった場合には予防的治療を検討します。もし治療する場合には、頭部を開頭する「開頭クリッピング術」、または足の付け根の動脈からカテーテルを挿入して治療する「脳血管内治療」を行います。動脈瘤の部位や大きさ、血管の状況から総合的に判断して、より適切な治療方法をご提案します。
他にも脳神経外科が扱う疾患はたくさん
脳神経外科の外来で診察される疾患について説明してきました。他にも「脳腫瘍(のうしゅよう)」(詳しくは「脳腫瘍の基礎知識〜発生頻度の高い髄膜腫について〜」をご覧ください)「特発性正常圧水頭症」(詳しくは「特発性正常圧水頭症について」をご覧ください)「頭部打撲」「頭部外傷による頭蓋内出血」「三叉神経痛」「片側顔面けいれん」「脊椎・脊髄疾患」「脳動静脈奇形」「硬膜動静脈瘻(こうまくどうじょうみゃくろう)」など、脳神経外科が扱う疾患はたくさんあります。「この症状は脳が原因かも?」と不安に思われる場合は脳神経外科の受診を検討してください。